NEWS

アメリカのLIGOとヨーロッパのVIRGOでつくる共同研究グループは、連星中性子星合体によって発せられた重力波の初検出に成功したと発表しました。

2017年8月17日、LIGOおよびVIRGO共同研究グループは、全世界90以上の天体観測装置に対して、連星中性子星の合体現象から発生する重力波の信号と無矛盾な信号(GW170817)を検出したというアラート(警告情報)を送信しました。信号の持続時間は約100秒間であり,1秒未満であったブラックホール合体からの信号と比べて非常に長いものでした。この事実だけからも,合体した星の質量が典型的な連星中性子星の質量であるということがわかります。

検出された信号をより詳細に解析することにより、今回の現象が地球から1.3億光年離れた場所で発生したものであることが分かりました。合体の直前,巨大な重力によって中性子星は大きく歪められます。この歪みが重力波の波形に与える影響から,中性子星の構造や,極限密度における核子の振る舞いと行った物理を研究することができます。

さらに驚くことに,今回は重力波の到来から約2秒後に,小規模なガンマ線バーストが地球を周回する2つの人工衛星によって観測されました。これは,これまで謎に包まれてきたショートガンマ線バーストの起源解明に大きな意味を持ちます。すなわち,ショートガンマ線バーストは連星中性子星の合体から発生するというモデルが正しいと確認されたわけです。

LIGO-Virgoの観測から導き出された重力波源の方向は,南天の小さな領域を示していました。国立天文台重力波プロジェクト推進室の室長で,CNRS/LAPPを通してVirgoチームの一員でもあるRaffaele Flaminio教授は次のように語ります。

「米国のLIGO検出器と欧州のVirgo検出器のデータを組み合わせることで,今回の観測では,これまでで最も精度良く重力波の到来方向を決めることができました。」

この観測に引き続き数週間に渡って,地上・宇宙合わせて70以上の観測装置がこの重力波源の方向に向けられました。ハワイにあるすばる望遠鏡のような,8m級の望遠鏡もこの世界的な探索に加わりました。アラートが発信されてから11時間以内に,新しい星が銀河NGC4993の近傍で検出されました。引き続いてこの新星は,X線,紫外線,可視光,赤外線,電波といった幅広い電磁波波長域で観測されました。これらの観測によって,この中性子星合体はキロノバと呼ばれる現象を引き起こしたことが確認されました。キロノバは,金などの重元素が合成される重要な過程と考えられています。

「重力波検出器によって得られた情報を,光学望遠鏡その他の電磁波観測装置の観測と組み合わせることで,基礎物理学,天文学,そして宇宙論に対する新たな知見を得ることができたのです」とFlaminio教授は語ります。

「我々は,重力波の速度を測り,従来の測定と完全に独立な宇宙膨張の速度測定を行いました。そして,もしかしたら新しい種類の近傍爆発現象を発見したのかもしれません。日本のKAGRA検出器が動き出すことによって,重力波検出器の国際ネットワークは更にその能力を増し,さらなる驚くべき発見が期待されます。」

LIGOのプレスリリース

Virgoのプレスリリース


LIGOはNSFが出資するプロジェクトです。LIGOを創設し、LIGOおよびAdvanced LIGOを主導するCaltechとMITが運用に携わっています。Advanced LIGOプロジェクトの資金には、NSFが中心となり,ドイツ(マックスプランク協会)、イギリス(科学技術施設振興会議)、オーストラリア(オーストラリア研究評議会)が重要な参加と寄与をしています。世界中の100程度の研究機関から1200人を超える科学者がLIGO科学コラボレーションに参加しています。これには、GEOコラボレーションやオーストラリアのOzGravも含まれます。さらなる協力者は、http://ligo.org/partners.phpにリストアップされています。

Virgoコラボレーションは、20の異なるヨーロッパの研究グループに所属する280人以上の科学者・研究者で構成されています。その内訳は,フランスの自然科学研究センター(CNRS)から6つ、イタリアの原子核物理研究所(INFN)から8つ、国立物理学会(Nikhef)を含めオランダから2つ、ハンガリーのMTA Wigner RCP、ポーランドのPOLGRAWグループ、スペインのバレンシア大学、そしてCNRS、INFN、Nikhefが出資してイタリア・ピサ近郊でVirgo検出器を設置しているヨーロッパ重力観測所EGOです。

  • TOP>
  • ニュース>
  • 連星中性子星合体からの重力波が初検出されました
top