メンバー

都丸 隆行(とまる たかゆき)

都丸 隆行(とまる たかゆき)

教授・プロジェクト長

gw-contact_at_ml.nao.ac.jp

 

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研究分野

重力波天文学、実験物理学

経歴

東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 博士課程 修了
日本学術振興会 特別研究員
高エネルギー加速器研究機構 研究員、助手、助教、研究機関講師、准教授
2019年度より、国立天文台 教授、重力波プロジェクト長、総合研究大学院大学天文科学専攻 教授
2020年度より、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 教授(兼任)
この他、東京大学宇宙線研究所 客員教授、高エネルギー加速器研究機構 客員教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 客員上級科学研究員
大型低温重力波望遠鏡KAGRA Executive Officeメンバー

研究内容

「サイエンスに天文も物理も区別は無い!」をモットーに、最先端技術をベースとした実験的研究を行っています。興味の範囲は宇宙から素粒子まで多岐に渡りますが、特に興味を持っているのは重力相互作用そのものです。重力は最初に発見された相互作用にも関わらず未だに謎が多く、その性質はあまりよく分かっていません。その性質を理解する第一歩として、一般相対性理論から導かれる「重力波」の検出と理解が非常に重要であると考えています。したがって、近年は重力波の検出器開発と観測に力を入れています。

重力波は2015年に米国のLIGO望遠鏡で初めて直接検出され、新しい宇宙の観測手段としてとても注目されています。2020年までに50個のコンパクト連星合体から放射された重力波が観測されていますが、その大部分は太陽質量の数10倍もある重いブラックホール同士の合体によるものです。なぜ宇宙にこれほどたくさんの重いブラックホールが存在するのか?は、大きな謎です。また、2017年に観測された中性子連星合体イベントでは、重力波が観測された直後にショートガンマ線バーストが観測され、ショートガンマ線バーストの起源が中性子連星合体であることが確定的となりました。さらにその後の様々な波長でのフォローアップ観測により、金のような重い元素が中性子連星合体で大量に生成されることも分かってきました。このような重力波と光や電波の観測を組み合わせたマルチメッセンジャー天文学はこれからの天文学の重要なテーマです。

このような状況の中、日本の重力波望遠鏡KAGRAも急ピッチで感度向上のための改良を行っており、国際重力波観測ネットワークの一翼を担おうとしています。KAGRAが重力波観測に加わることで、重力波イベントの位置特定精度が高まり、光や電波でのフォローアップがしやすくなると期待されています。KAGRALIGOVirgoよりも20年遅れて建設されたため、重力波初観測はまだですが、最先端の技術をいくつも搭載しています。特に、KAGRAの最大の特徴である「極低温鏡システム」は私が学生の頃から20年の歳月をかけて開発したもので、世界の注目を集めています。ヨーロッパの将来計画Einstein Telescopeでも極低温鏡システムの搭載が予定されており、活発な国際共同研究を行っています。また、近年取り組んでいる重力波信号のキャリブレーションでは、レーザーの光輻射圧を用いる方法に加え、オリジナルアイデアの重力場変調を用いる方法の開発なども行い、重力波天文学の高精度化を目指しています。

 このように、最先端の実験技術を用いてサイエンスを開拓していくことを目指しています。

論文リスト

  • "Large-scale Cryogenic Gravitational wave Telescope KAGRA", Gravitation, 100 years after GR (proceedings of Recontres de Moriond), (2015) p255-262
  • "KAGRA-Large-scale Cryogenic Gravitational wave Telescope-" , Takayuki Tomaru on the behalf of KAGRA, Proceedings of XIIth International Conference on Gravitation, Astrophysics and Cosmology (2015) p153-159
  • "Measurement of the Cosmic Microwave Background Polarization Lensing Power Spectrum with the POLARBEAR Experiment", The POLARBEAR Collaboration, Phys. Rev. Lett. 113, 021301 (2014)
  • "Evidence for Gravitational Lensing of the Cosmic Microwave Background Polarization from Cross-Correlation with the Cosmic Infrared Background", POLARBEAR Collaboration, Rev. Lett. 112, 131302 (2014)
  • "A Measurement of the Cosmic Microwave Background B-Mode Polarization Power Spectrum at Sub-Degree Scales with POLARBEAR", POLARBEAR Collaboration, ApJ, 794, 171 (2014)
  • "The POLARBEAR-2 Experiment", Takayuki Tomaru et al., , Proc. SPIE 8452, Millimeter, Submillimeter, and Far-Infrared Detectors and Instrumentation for Astronomy VI, (2012), 84521H
  • "Conduction Effect of Thermal Radiation in a Metal Shield Pipe in a Cryostat for a Cryogenic Interferometric Gravitational Wave Detector", Takayuki Tomaru et al., J.J. A. P. 47 (2008) 1771-1774
  • "Thermal radiation through a metal pipe and its reduction", Tomaru T., et al., Proceedings of International Cryogenics Engineering Conference 22, (2008) 513-518
  • "Reduction of heat load of LCGT cryostat", Takayuki TOMARU, et al., Proceedings of 7th Edoardo Amaldi Conference on Gravitational Waves (2008)
  • 「ニッケル-リン光吸収体の真空特性と光学特性評価」, 都丸隆行 他, 真空 48, (2005) 301-303
  • 2004 低温工学協会論文賞
  • "Vibration Analysis of Cryocoolers", Takayuki Tomaru et al., Cryogenics 44 (2004) 309-317
  • "Heat Transfer of Several Materials at Cryogenic Temperature", Takayuki Tomaru et al., Proceedings of 3rd International Symposium of Heat Transfer Engineering and Energy Conservation (2004) 751-756
  • "Development of a cryocooler vibration-reduction system for a cryogenic interferometric gravitational wave detector", Takayuki Tomaru et al., Quantum Grav. 21 (2004) S1005-S1008
  • 「小型冷凍機の振動解析」, 都丸隆行 他 (1 番目/他 7 名), 低温工学 38 (2003) 693-702
  • "Maximum heat transfer along a sapphire suspension fiber for a cryogenic interferometric gravitational wave detector", Takayuki Tomaru et al., Phys. Lett. A 301 (2002) 215-219
  • "Evaluation of the Performance of Polished Mirror Surfaces for the TAMA Gravitational Wave Detector by Use of a Wave-Front Tracing Simulation", Takayuki Tomaru et al., Appl. Opt. 41 (2002) 5913-5920
  • "Thermal lensing in cryogenic sapphire substrates", Takayuki Tomaru et al., Class. Quantum Grav. 19 (2002) 2045-2049
  • "Cryogenic measurement of the optical absorption coefficient in sapphire crystals at 1.064μm for the large-scale cryogenic gravitational wave telescope", Takayuki Tomaru et al., Phys. Lett. A 283 (2001) 80-84

受賞

2015 Breakthrough Award, Neutrino (Shared)
2004 低温工学協会論文賞

大学院への進学を考えている方へ

 2020年度より東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の併任教授を務め、「重力波天文学」の講義を物理学専攻のKipp Cannon教授とともに受け持っています。「研究内容」にも述べたとおり、最先端の実験技術で新しいサイエンスを開拓することが私のテーマです。

 20数年前、「熱雑音を下げるために干渉計型重力波検出器の鏡を極低温まで冷やしてしまおう」と仲間数人で研究を始めた時には、そのような事が出来るとは誰も信じてくれませんでした。しかし、1つ1つ課題を解決し、技術を積み上げ、ようやくKAGRAで「極低温鏡システム」は実現できました。おかげで、干渉計型重力波検出器の極低温化技術のパイオニアとしての評価を頂き、海外からも一緒に研究しようとたくさん声をかけて頂けるようになりました。誰もやらなかったことをやったからこそ、このように評価して頂けるようになったのだと思います。今流行っている事を研究するのでは遅いのです。学生のみなさんには時流に流されず、是非パイオニアとなるような研究をして頂きたいと思っています。原理が正しければ、いつか必ず実現出来ます。

 日進月歩のサイエンスの世界は一見華々しく見えますが、実際は1つ1つ地道な研究の積み重ねです。まさしく「99%の汗と1%のひらめき」なのです。しかし、興味のあることをやっているときの苦労は不思議と楽しいものです。スポーツみたいなものでしょうか?(ちなみに私の趣味は空手と古武術、釣りです。)

 研究機関である国立天文台で研究することのメリットは、大学とは比べものにならないほど充実した研究設備にあると思います。私の研究室はKAGRAのある神岡はもちろん、三鷹キャンパスのTAMA300と先端技術センター、つくばの高エネルギー加速器研究機構にそれぞれ実験室と設備を持っており、研究環境は非常に充実しています。この優れた環境を十二分に活用し、新しいサイエンスに是非チャレンジしてみてください。そのような意欲のある若い方を歓迎しますので、質問があれば気軽に連絡ください。元気な若い人達と一緒に研究出来るのを楽しみにしています。

 

所属大学院生(2024年度)

西野 耀平(D2

三橋 康平(D1

大塚 宗丈(M2)

葉 与衡(M1)

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