大型低温重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)プロジェクトは、超高感度の重力波検出器を建設し,LIGO, Virgoなどと共に世界的な重力波検出器ネットワークを構築することを目指しています。この計画は、東京大学宇宙線研究所を中心として、我々重力波プロジェクト推進室、高エネルギー加速器研究機構など国内外の多くの大学、研究機関が協力して推進しています。
KAGRAの特徴
KAGRA(かぐら)は通常の光学望遠鏡や電波望遠鏡とは大きく違っており、レーザー干渉計を使用しています。このレーザー干渉計では重力波の検出原理で解説されているような原理を使って、時空のひずみを測定します。レーザー干渉計の精度を高めるためには、高出力のレーザー光源、大口径・超低損失ミラー、超高真空装置などの様々な最先端技術を必要とします。
その中でも特にこの検出器の大きな特徴をまとめると、以下の4つが挙げられます。
- 1検出器の大きさ:3km KAGRAではレーザー干渉計の基線長は3kmで、国際的な競争力を持つ検出器建設を目指しています。現在、伊・仏では共同で3kmのVirgo検出器を1台、米国ではLIGOが4kmの干渉計を2台(そしてインドにもう一台を建設するためのパーツ)を有しています。
- 2検出器を鉱山内に建設 鏡を揺らす原因である地面振動が小さい場所の方が重力波の検出に有利です。そのような場所を探した結果、岐阜県飛騨市にある神岡鉱山の中に望遠鏡を作ることにしました。
- 3鏡をマイナス250度(20ケルビン)まで冷却 鏡を揺らすもう1つの原因である熱雑音を小さくするために、鏡をマイナス250度(20 ケルビン)まで冷却することにしました。
- 4鏡の材質としてサファイアを用いる サファイアは光学特性に優れているのみならず、低温に冷却すると熱伝導や機械的損失が少なくなるなどの長所があるためKAGRAの鏡の材質として最適です。
上にあげた特徴のうち2~4は諸外国の検出器にはない、日本のKAGRA検出器独自の特徴で、世界のどの検出器とも違うオンリー・ワンの検出器を目指しています。
プロトタイプ低温干渉計検出器CLIO
KAGRAでは反射鏡としてマイナス250度まで冷却したサファイア鏡を使用しますが、このような鏡をつかった大型のレーザー干渉計は世界に例がありません。そこで KAGRAの実現性を実証するため、東京大学宇宙線研究所の重力波グループは神岡鉱山内に冷却サファイア鏡を用いた基線長100mプロトタイプ干渉計CLIOを建設しました。重力波プロジェクト推進室は、東京大学宇宙線研究所と協力して、このCLIO検出器の開発を行ってきました。CLIOは鏡の冷却による熱雑音の低減を示すことに成功しました。